建物の解体工事を考えたときに、もしもアスベストの含有が発覚したら費用はどうなるのか、という不安を持ったことはありませんか。
アスベストが含まれていた場合は、必ず除去したうえでの解体工事が必要となります。その場合の費用相場について今回は見ていきましょう。
アスベストって結局どんなものなのか、ということからまず触れていきます。
アスベストって何?
「人体に悪影響」「発がん性がある」「古い建物に含まれていると聞いたことがある」
一般的にアスベストに対しての知識といえば、この程度であることがほとんどでしょう。
アスベストとは「石綿」ともいって、「繊維状ケイ酸塩鉱物」という天然に存在する物質です。熱や摩擦に強いという性質があるため、一昔前は多分野で広く使用されてきました。建材としても大活躍していた時代があったのですが、人体への有害性がわかってからは使用に制限がかかり、2006年には全面的に使用禁止となっています。
しかしアスベストの危険性が知られていなかった頃に建てられた建物はまだまだ残っています。壁面内部に残っている状態であれば被害はありませんが、解体工事の際には飛散する恐れがあるため、注意が必要なのです。
アスベスト調査の費用相場
令和4年の4月から、一定規模以上の解体・改修・補修工事の前には、アスベストの有無を確認する事前調査の結果報告が義務付けられました。
以前からアスベスト含有が疑われる建物の解体工事前には、専門の業者に依頼してアスベスト調査を行ってもらうことが多かったのですが、このたびの義務化でアスベスト調査はもっと広い範囲で行われることになったのです。
全面的なアスベスト使用禁止となった2006年、この年より前に建てられた建物には、多かれ少なかれアスベストが使用されている可能性があるということです。
アスベストが含まれているかどうかということは、外見からでは判断がつかず、また素人には到底判別できないことでもあります。調査は、必ず専門家に依頼しなければいけません。
アスベストの事前調査にかかる費用は、3~5万円が相場ともいわれています。詳しくは後述しますが、お住いの自治体によってはアスベストの事前調査にかかる費用に対しても補助金が出ます。一度調べてみると良いでしょう。
解体工事に伴うアスベスト除去の費用相場
処理面積に応じて計算される除去費用
まず、アスベストの除去にかかる費用は、アスベストが含まれる部分の処理面積に応じて計算されます。
たとえば、アスベストが屋根に含まれる場合は屋根の総面積、壁に含まれる場合は壁の総面積ということになります。
処理面積に対しての1平方メートル単価は、2007年に国土交通省の調査で以下のような目安が設定されています。
300平方メートルまで : 2万円/平方メートル ~ 8.5万円/平方メートル
300~1,000平方メートル : 1.5万円/平方メートル ~ 4.5万円/平方メートル
1,000平方メートル以上 : 1万円/平方メートル ~ 3万円/平方メートル
ここから算出されるアスベストの除去費用が、純粋な解体工事費用とは別で請求されることになるわけです。
たとえばアスベスト除去の面積が20平方メートルあったとしたら、アスベスト除去費用40万~170万円が、解体工事費用にプラスされることになります。
アスベストの飛散のしやすさレベルで除去費用は変わる
前述の1平方メートル単価が「2万円/平方メートル ~ 8.5万円/平方メートル」のように、なぜこれだけの幅があるかというと、「アスベストの飛散のしやすさ」によって分けられているレベルに従って、アスベストの除去費用は変わってくるからです。
レベルの分け方は、以下の通りです。
アスベスト飛散レベル1
レベル1は「もっとも飛散しやすく、アスベスト濃度も高い」ということを表します。そのため、作業の2週間前に所定機関への届け出が必要だったり、作業中も飛散防止のための最大限の配慮が必須だったりと、慎重さがもっとも求められ、その分除去費用の相場も高くなります。
レベル1アスベストは天井や柱など、広い範囲に噴きつけられていることが多いため、その分でも除去費用は高額になりがちです。
アスベスト飛散レベル2
次に飛散性・濃度が高いレベル2アスベストは、保温材、結露防止剤、断熱材、耐火被覆材などとして使われていることが多く、こちらも飛散性は高めです。したがってレベル1ほどではありませんが、慎重な除去作業が求められ、その分費用も1平方メートルあたり1~6万円とそこそこ高額になるでしょう。
アスベスト飛散レベル3
屋根材や天井、サイディング外壁材などに使用されているアスベストは、レベル3に該当します。レベル1や2に比べれば飛散性は低く、手作業での除去もある程度可能であるため、除去費用ももっとも安価となっています。目安としては、1平方メートルあたり3, 000円くらいです。
アスベスト除去の工法
囲い込み(カバーリング)工法
アスベストの含有資材の上から、非アスベスト資材を覆いかぶせる工法です。除去というよりは、アスベストが飛散しないように密封する方法で、根本的にアスベストを取り除くわけではないため、費用は比較的安上がりで工期も短く済むでしょう。
しかし、その建物を解体する際には最終的に除去工事が必要になるため、結果的にかかる費用は高くつく恐れがあります。
封じ込め(エンカプスレーション)工法
アスベスト剤の上から薬剤を塗布したり浸透させたりして、囲い込み工法と同様にアスベストの飛散を防ぐ工法です。
こちらもやはり囲い込み方法と同じく、根本からの除去ではないため、その後も定期的なメンテナンスが必要である上、最終的な費用額としては高くつく可能性が出てきます。
要するに囲い込み・封じ込め工法は、一時的な対策に過ぎないともいえます。しかしアスベストの飛散はほぼ確実に抑えられるため、解体をまだまだ考えていないような建物であれば、十分使うことができる工法といえるでしょう。
除去(リムーバル)工法
専用の機材を使用し、アスベストを下地から取り除いていく工法です。その分手間も費用もかかりますが、囲い込みや封じ込め工法と違ってアスベストを完全に除去してしまうため、その後の解体や改修工事の際の飛散の心配もなくなります。
また、工事後のメンテナンスも必要なくなるため、一時的な出費はもっとも大きいとしても結果としては1番安上がりで済む工法であり、できればこの方法を取るように推奨もされています。
アスベスト除去には補助金が使える
アスベスト含有物に対しては、国からの補助金が用意されています。前述したように「アスベスト含有調査」に補助金が出る場合と、「アスベスト除去工事」に出る場合とがあります。
国からの補助金といっても、各自治体を経由しての補助となるため、細かい要件や内容は自治体ごとに異なります。まずはお住いの自治体のホームページなどを確認するところから始めてみましょう。強い味方になってくれるはずです。
まとめ
アスベストの存在や危険性は、近年になって広く知られることとなりましたが、まだまだ除去の方法や費用相場についてなどは不明確に思えます。きちんと知って、アスベストの危険が疑われる建物に関しては早めに除去作業・解体工事に踏み切りましょう。
まずは解体を考えている建物が2006年以前に建てられたものなのかどうか、という確認からですね。